年中行事
ANNUAL EVENT
温座秘法陀羅尼会(おんざひほうだらにえ)1月12日~18日(結願)
温座秘法陀羅尼会は浅草寺全住職により厳修する年頭の法要で、江戸中期より伝わる年間で最も厳粛な行事である。昼夜とぎれることなく7日間にわたって「観音秘密供養法」という修法を168座(1回の修法を1座という)行なう。
修法が1座終わるとすぐに修法者が交替して修法を始め、座が冷える間もないため「温座」と呼ばれる。「観音秘密供養法」を修することから「秘法」であり、修法が行なわれる本堂内陣の一室は幔幕で覆われて、最終日まで外部からはうかがえない。そして、一座終わるごとに、『千手千眼観世音菩薩広大円満無碍大悲心大陀羅尼』と『観音経』を唱えることから、「陀羅尼会」の名がある。この長い修法では、「天下泰平」「玉体安穏」「五穀豊穣」「万民豊楽」など、世界平和や日本国全体の幸福が祈願される。
行事は次のように進行する。1月12日午前6時、一山の住職全員が本堂内陣の一室に出仕するなか、浅草寺貫首によって第1座の修法が始められる(開白)。そして168座目の最後の1座(結願)は18日午後5時頃から開始される。この日の夕刻には、道場のまわりにめぐらされた幔幕が引き上げられ、ご信徒にも結縁の場が与えられる。
最後の修法が行なわれている壇の脇では、曠野(荒れた土地)に住むといわれる魑魅魍魎(さまざまな化け物)や餓鬼(亡者)に対して供物を施すための修法「曠野神供」が修され、供物(餅)は、「錫杖師」「神供師」という役目の2人の僧によって境内の外れにある銭塚地蔵堂境内に掘った穴の中に投入される。
道場内では、天皇陛下に献上する「玉体安穏」祈祷札、上皇陛下に献上する「尊体健全」祈祷札、皇嗣殿下に献上する「尊体萬安」祈祷札などの加持が終わると同時に、堂内の明かりが全て消え、壇上に積まれた仏具が大きな音を立てて崩される(「破壇作法」)。すると、本堂裏手から手に松明を持った鬼が2人現れ、本堂正面階段を下りて、境内を駆け巡ったのち、銭塚地蔵堂へ向かう。鬼は、供物を投入した穴に松明を投入し、全ての行事が満了する。
温座秘法陀羅尼会は、諸尊への祈願と施餓鬼作法(諸霊に食べ物を施して供養する)を兼ねたもので、この法要によって年頭の除災招福の祈願が達成される。
1月18日夕刻に行なわれる結願法要では慢幕が引き上げられ、ご信徒にも結縁の場が設けられる。
法会終了と同時に堂内すべての照明が消され、松明を持った2人の「鬼」が現れる。鬼の容姿から俗に「亡者送り」とも呼ばれる。
鬼の持つ松明の炎により一切の災厄が浄化される。
鬼の持つ松明の炭を縁起物として持ち帰られるご信徒の方々も…。
鬼は松明を持ち、境内各所をめぐる。
7日間修法された「温座秘法陀羅尼札」。ご希望のご信徒にも授与される(一躰3万円)。